喜の向くままスマホゲームブログ

当ブログは東アジアのスマホゲームについて「喜の向くまま」に書いていくものです。中国関連の話題が多めになると思います。

『重装上阵』紹介 ~飛行機もロボットも「作れる」メカアクション~

NetEaseは日本で最も成功している中国スマホゲーム企業(スマホゲームだけを扱っているわけではない)と言えるだろう。2017年2月に当時中国本土で大ヒットを飛ばしていた『陰陽師』を引っ提げて日本に本格上陸し、その後『荒野行動』によってその地位を確立した。さらに『Identity Ⅴ(第五人格)』や『ライフアフター(明日之后)』でも着実に結果を残している。これまでのケースでは中国でのリリースから3ヶ月~半年後くらいでいずれのタイトルも日本に持ち込まれている。

 

そんなNetEaseが年明け早々に中国で新作のリリースを予定しているようだ。それが『重装上阵』というメカアクションゲームだ。既に複数回のテストプレイを実施しており、リリースに向けての準備を着々と進めている。

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Steamで配信されている『TerraTech』というタイトルをご存知だろうか。ものすごく端的に言うと、自分でパーツを組み立ててロボや飛行機といったメカを作って探索や戦闘を行うゲームだ。こちらはイギリスのPayload Studiosという開発陣が手掛けているのだが、『重装上阵』はこのPayload Studiosと協力して制作されているようだ。

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こちらは『TerraTech』のスクショ。確かに『重装上阵』にもこのエッセンスがしっかり取り入れられているように感じる

『TerraTech』に比べ、『重装上阵』はPvPをより強く打ち出している。プレイヤーは既定のパーツ数の範囲内で自由に自分が操作するメカを作り出し、それを持ち寄って(あるいは開戦後に0から作る形式で)他のプレイヤーと戦う。チーム対抗での陣取り戦からバトロワモードまで多様な遊び方で楽しめるのがポイントだ。

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まずこのメカ作りが既に楽しい。移動のための脚部やタイヤ、戦闘のための銃器やシールド、相手を妨害するための特殊なパーツまでバリエーションがありカスタマイズの度に心がくすぐられる。ありきたりな表現だが、「自分だけのメカを作って戦う」がちゃんと実現されているのが嬉しい。

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そしてこだわりぬいて作ったメカで戦う。操作感はTPSなので既に慣れているプレイヤーも多いのではないか。動きについては前回のテストプレイ時に撮影したものがあるのでこちらで確認してほしい。

 

現在はテスト中ということもあってプレイヤーが少なかったり、面白さを深めるために調整がまだ必要では?と思う部分もまぁまぁあったりするのだが、遊びの部分の拡張性はかなり高いと感じているし、まだまだこれから面白くなっていくという期待を持たせてくれるタイトルであるのは間違いない。

 

…のだが、このテスト版においてプレイヤーが面白味を見出す部分が、どうやら私が思っていたのとは違ったようだ。私はてっきり、メカを使った新しいTPSとして対戦が盛り上がるものだと思っていた。実際、制作側はPvPに力を入れているわけでもあるし。いや、対戦は対戦でちゃんとプレイされているのだと思う。だがそれ以上にプレイヤー各位はメカ作りを極めようと試行錯誤しているようなのだ。

 

たしかにメカ作りは面白い。なにせ『重装上阵』では各種対戦モードの他に「創造」というメカ作りに特化したとても平和なモードが用意されているくらいだ。そこでは対戦でメカを作る時よりもはるかに多くのパーツを組み合わせてメカを作ることが許されるので、最もポピュラーな戦車型だけではなく二足歩行のロボットや飛行機をも作ることが可能なのだ。しかも推進器(スラスター)のパーツがあるから、それらを実際に飛ばす事すらできてしまう。

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実際に彼らが作り出した渾身の作品を見てみよう。まずは飛行機…いや、ミサイルを搭載しているしもはやこれは戦闘機だ。

www.taptap.com

 

力作を作りし猛者はまだまだいる。飛行機をちょっといじったこちらの作品は…まさしく天から落ちてくる巨大な聖剣ではないかッ!…私はこういった作品を考えたり作ったりすることがとても苦手なのでただただ尊敬や羨望の念を送るばかりだ。

www.taptap.com

 

そしてメカである以上二足歩行型ロボも欠かせない。もう少しパーツの種類やカラーバリエーションがあればどこかで見たことのある「あの機体」だって作ることができる…かも?

www.taptap.com

 

こうして彼らは自慢の作品を作ってはネットに投稿し、それに触発されたプレイヤーが俺も俺もと自らの作品に改良を加えていく。それを眺めているだけでも楽しいし、奇抜なものを作って注目を浴びたいという心理も理解できる。こういった形でここまでコミュニティで話題のネタになるとは予想もしていなかったのだが、ともあれゲームに対してプラスに作用することなので歓迎したい。

 

TapTapによると正式リリースは2020年1月9日を予定しているそうだ。あと1ヶ月でどれだけブラッシュアップできるのだろうかという心配も多少あるが、まぁそこはふたを開けてみてのお楽しみということにしよう。

 

関連リンク

『重装上阵』公式サイト

www.taptap.com

『泡沫冬景(Christmas Tina)』、iOS版が12月20日に中国で配信開始!Android版も12月24日配信予定

以前紹介した『泡沫冬景(Christmas Tina)』のiOS版が12月20日に中国で配信されることが決まったようだ。既に中国App Storeでも予約が開始されている。

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事前登録件数は40万件を超えているとのことだが、同ジャンル(AVG)のタイトルの事前登録件数が10万件を突破しないことも珍しくないことを考えればいかに注目度の高いタイトルかということがわかるだろう。ゲーム内容については以下の記事を参照してほしい。

kinomukumama0526.hatenablog.com

 

有料アプリとして配信され、価格は30元。しかし配信開始から30日間はセール価格として18元で販売されるとのこと。

全33章で構成されており、文字数(中国語)にしておよそ20万文字。想定プレイ時間はおよそ8~10時間ということでなかなかのボリュームになっているようだ。

価格が割引なしの30元だとしても日本円換算で450円ちょっとくらいだろうか…素敵な物語が10時間も楽しめて450円は破格すぎやしないか。

 

またDLCについては現在3つの予定があり、いずれもメインストーリーには影響せずキャラの設定や背景を補完するような内容になるらしい。

なお、Android版についても12月24日の配信が予定されており、中国のプレイヤーにとってはまさに制作陣からのクリスマスプレゼントになることだろう。

 

PC版(Steam)については配信時期と価格ともに未定だという。もちろんアプリの今のところ日本版についても一切情報はないが、今後の続報に期待したいところだ。

 

関連サイト

www.taptap.com

『王牌战士(ACE FORCE)』レビュー ~これは紛れもなく「スマホ版オーバーウォッチ」~

オーバーウォッチ』と言えば、ブリザード・エンターテイメントが開発・運営しているチーム対戦形式で行われるオンラインFPSで、世界中で多くのプレイヤーを抱えている人気作品だ。最近、シリーズ第2弾の『オーバーウォッチ2』が発表され話題になったことも記憶に新しい。

そんな魅力的なゲームが「スマホで遊べる」としたらどうだろうか。実は中国では既に「スマホオーバーウォッチ」とも言うべきタイトルがリリースされている。

 

『王牌战士(ACE FORCE)』(以下:王牌战士)はテンセントが8月13日に中国でリリースしたスマホFPSだ。原則5vs5の形式で行われ、プレイヤーは多様なヒーローの中から1体を選択してチームの勝利のために役割を全うする。そういったゲームシステムでもあることから非Pay to Winタイトルであることを標榜しており、実況映えするタイプなことも相まって非常にe-sports向きなタイトルだ。

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まずはプレイ動画を見てもらいたい。スマホでありながら快適なFPS体験が実現されている。

 ゲームの流れを紹介しよう。プレイヤーは複数のゲームモードから遊びたいものを選択し、ソロまたはチームを組んでマッチング成立を待つ。マッチングが成立したら自分が使用するヒーローを選択する。同一チーム内で同一のヒーローを重複して選択することはできないので、早めに選択するか複数のヒーローの扱いに慣れておくといい。

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全員のヒーローの選択が済んだらいざ試合開始だ。指定の勝利条件達成のために、チームの勝利を目指してプレイヤーは戦いに身を投じる。デフォルトでは画面左でヒーローを移動させ、右で攻撃やスキル発動などを行う一般的なスマホアクションゲームの要領で操作する。もちろん自身が操作しやすいようにボタンの配置や大きさを変更することも可能だ。

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試合をしていれば、当然倒されることもある。その場合はリスポーン地点に戻されるのだが、その際に試合中であっても使用するヒーローを変更することができる。相手チームと一戦交えてみて相性が悪いなと感じたら思い切って違うヒーローを使ってみるのも1つの戦略だ。

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画面中央下の「切換选手」から使用するヒーローを変更できる

そしてどちらかのチームが勝利条件を満たしたら試合終了。リザルト画面ではMVPが表示され、各プレイヤーのキル場面を集めたハイライトが流れる。他のプレイヤーにいいねを送って健闘をたたえ合うこともできる。

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以上が『王牌战士』の基本的な流れになる。試合を繰り返して腕を磨くもよし、気の合う仲間とワイワイ遊ぶもよし、楽しみ方は人それぞれだ。

 

だが、FPSである以上やはり勝利を追い求めたくなるのが人の性ではないだろうか。ということで、勝利のための第一歩として『王牌战士』に登場するヒーローについて考えてみよう。

ヒーローは以下の5つのタイプに分類される。(右は私が使ってみた感想)

①狙击(スナイパー):遠距離から強力な一撃を放ち味方を支援

②重装(タンク):強固な壁性能を武器に前線でチームの盾に

③游击(レンジャー)臨機応変な立ち回りで敵を撃破

④压制(ダメージ):ドローンや地雷の設置や飛行攻撃で戦場をコントロール

⑤突袭(アサシン):透明化や分身などトリッキーな動きで敵を急襲

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それぞれ向き不向きがあるのでおのずと求められる役割が生まれる。『王牌战士』はチーム戦なので、チームが勝つために自分のヒーローでやるべきことをやるという立ち回りをする必要がある。このヒーローはどう運用すればチームに有利にはたらくか、ということを考えるのは本作の永遠のテーマだ。

そして運用を考える上で、「技能」も非常に重要な要素だ。各ヒーローは固有の技能を複数有している。当然1つとして同じものはなく、これにより同タイプのヒーローであっても使用感や運用方法が大きく差別化されている。

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例えば「雪」というヒーローは、味方に向けて回復効果のある矢を放てる。スナイパーでもあるので、後方支援に最適だ

それとは別に、全ヒーロー共通で試合に持ち込める「战备物資」というものもある。使うと一時的に移動速度が上がったり付近の敵の位置を察知できたりする。僅かな反応の遅れが命取りになるFPSだからこそ、有効活用できれば勝率も上がるだろう。

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また各ヒーローには「天賦」という、弾倉容量増加やスキルクールタイム短縮などの強化項目が7つ用意されている。試合で使用したヒーローには熟練度が加算され、その段階に応じて7つの天賦の中から最大4つを指定して試合中に発揮することができる。

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課金云々ではなく「とにかくいっぱい遊べばヒーローも強く使いやすくなる」という形式なので不公平感はないし、天賦のカスタマイズにより同一のヒーローでも運用方法に若干違いが出るのも面白い。

 

そして勝利の追求のためにはもうひとつ、「どんなルールで戦うのか」も知らねばなるまい。

現在、『王牌战士』では以下の4つのゲームモードでランク戦が行われている。いずれも5vs5で戦うのは共通事項だ。

①団体対抗:先に指定されたキル数を達成したチームの勝利

②拠点占領:マップの指定区域の占有率を先に100%にしたチームの勝利

③団体殲滅:先に相手チーム5人全員を倒したチームに1ポイント加算。どちらかのチームが全滅したら第2戦、第3戦と繰り返し、4ポイント先取したチームの勝利

④爆破入侵コイントスで攻撃側と防御側に分かれ、攻撃側はマップの指定された2地点のうちどちらかで爆弾を起爆できれば1ポイント獲得。防御側は制限時間まで起爆を許さないか、設置された爆弾を解除できれば1ポイント獲得。これを繰り返して3ポイント先取したチームの勝利

この4つのモードに基づき、様々なマップで試合を行う。ルールの特性やマップの形状によって特に活躍が見込めるヒーロー(またはその逆)もいるだろうから、試行錯誤していろんな可能性を追究するのもいい。

なおこの他にもランクなどは気にせずに気楽に遊べる変わったゲームモードやバトロワモードなどが現在進行形で続々と追加されており、ゲームモードやマップの今後の拡充にも大いに期待できる。

 

日本では既に『Call of Duty Mobile』が配信された。スマホゲームが世に浸透し、進化を続け、遂にはFPSまで遊べるようになったのだ。昨今はTPSもFPSも当たり前のようにスマホでプレイできているけれど、これ冷静に考えると相当すごいことなんじゃないだろうか…。

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実は昨日のアップデートで1vs4の非対称対戦モードがちょうど実装されたばかりで、まだまだコンテンツとしての幅は広がりそうだ。しばらくはこの刺激たっぷりのFPSライフを堪能することにしよう。

 

関連リンク

『王牌战士』公式サイト

 

『A PROJECT』紹介 ~これはひょっとしたら中国産アトリエシリーズ…?~

中国では数年前から現在に至るまで「日式」などと称される、いわゆる日本風のスマホゲームが数多く開発され続けている。そしてそれらは中国国内にとどまらず日本にもサービス展開し、商業的に成功していると言えるものもかなり増えてきているのが現状だ。

 

そんな中国で、今新たに産声を上げようとしている日式スマホゲームがある。それが『A PROJECT』だ。もちろんこれは正式なタイトル名ではなく、まだコードネームの段階だ。

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最近になってその存在が広く知られるようになったばかりということもありゲームの基本的な情報もまだまだ出揃っていない状態ではあるのだが、どうやらジャンルとしては異世界を冒険するアドベンチャーRPGのようだ。ゲームの雰囲気に触れてもらうために、公式bilibiliアカウントに掲載されているPV第1弾を置いておこう。

 

冒険の舞台となるのはかつての戦いで魔王が消滅した後の世界。魔王の力の残滓はまだ世界に残っていて、依然として人々を困らせていた。いつか魔王が復活するかもしれない、そんな未来が訪れるのを防ぐため、勇者たちは世界各地に次世代の人材を育てる「セオドリック学院」を設立した。だが長く平和な時代が続いたことで人々は魔王の存在を徐々に忘れてしまい、現在では技術研究と冒険者養成が学院の主な目的となっていた。

そんな学院でプレイヤーはある日発生した事故(もしかして異世界転生?)をきっかけに学院長の助手に任命され、パートナー(女生徒?)とともに冒険をすることになる…

というような設定らしい。世界を救っている真っ最中のゲームはよくあれど、その後の世界を舞台にしているのは珍しい。本作のプロデューサーによると、「世界を救うことを主題としているゲームはありふれているし、現実の生活すら痛みを伴うこともあるのになぜゲームの中でも辛い思いをしなきゃいかんのか。俺はただ救う必要のない世界でかわいい女の子と一緒に過ごしたいだけなんだ!(一部意訳)」という考えのようだ。

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戦闘パート。スキルの連携演出シーンもあるようだ

実際ゲーム内では一般的なバトルだけでなく採集や釣りといった生活感のある行動もできるようだし、冒険に疲れたら学院に戻って女の子と戯れればいい。世界を救うなんていう重要な使命は背負わされていないのだから好きなように過ごせばいい、というスタンスに感じられる。

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学院内では愛らしいちびキャラとして動くのだろうか

実は現在初回のテストプレイに参加するためのアンケートが行われているのだが、そこでいつも利用しているゲームハードについてSwitchやPS4などのコンシューマ機を選択するとこれまでに遊んだことのあるゲームとして『アトリエシリーズ』や『ゼノブレイド2』の選択肢が出てくる。確かにゲームのPVやスクショを見る限りは『A PROJECT』もこういったジャンル、雰囲気のゲームという印象だ。

というか、ゲーム内の音楽は『アトリエシリーズ』でも実績のある阿知波大輔さん、柳川和樹さん、矢野達也さんによって制作されているとのこと。…いやもうこれアトリエじゃん…?

もっと言うと、ストーリーはNetEaseの『陰陽師』でシナリオを担当した下村健さんが手がけているそうだ。最近は中国のゲームでも日本のスタッフが関わっていることも全く珍しくはないが、本作もそれに漏れずというところか。無論、現在公開されている3人の女の子のキャラのCVも日本の声優(下地紫野さん、関根瞳さん、石見舞菜香さん)が担当している。

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この緑豊かな大地をどれだけ自由に冒険できるのか、非常に楽しみだ

この記事を書いている間に、近日中にAndroidで少人数を対象とするテストプレイを実施することが告知された。グラフィックも高品質に見えるし、現時点での私の期待度はかなり大きい。2020年には彼女たちとこの世界を自由気ままに冒険し安寧の時を過ごせる日が来るのだろうか。ひとまずは続報を待つことにしよう。

 

 関連リンク

『A PROJECT』公式bilibiliアカウント

『A PROJECT』公式weibo

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『泡沫冬景(Christmas Tina)』紹介 ~日中のタッグで贈るノスタルジックな青春群像劇AVG~

先日泡沫冬景(Christmas Tina)というビジュアルノベルAVGのテスト版をプレイした。私が普段プレイするゲームジャンルではないのだが、「1988年のバブル期の東京で出会った中国人の少年と日本人の少女の物語」という本当にあってもおかしくないような舞台設定が妙に気になってしまい、「なんか面白そう!」と直感的に思ったのだ。

テスト版なのでプレイできたのはわずか2章、2人が出会うところまでだった。だがストーリーを読み終えた時、私の心は「早く続きを最後まで読みたい!」という気持ちでいっぱいだった。それぐらい惹きこまれる内容だったからだ。

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絶対にいい作品になる、なってほしいという期待、願望を込めて『泡沫冬景(Christmas Tina)』について紹介したいのだが、ジャンルを考慮するとストーリーについての過度なネタバレは当然したくないので基本的な情報を整理することにしよう。

 

本作は日本と中国のスタッフが協力して制作しているタイトルだ。日本側のスタッフで言うと、例えば私が惹きこまれたストーリー、その原案・シナリオを担当しているのはかつて『narcissu』などの作品を手がけた片岡とも氏だ。

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上京後、公衆電話でバイトの面接予定を取り付けたヒロイン。都会に出てきたばかりだからか、このあとちょっと意外な行動に…

そして本作の特徴になると思っているのがCVの演出だ。日本人のキャラは日本の声優が、中国人のキャラは中国の声優が担当しているようだが、おそらく日本語ローカライズされても中国語のボイスは残して字幕対応にするのではないかと考えている。なぜなら、そうしないとストーリーへの没入感を阻害してしまうからだ。

少年と少女が出会った時、2人は互いの言葉を理解できずに困惑する描写がある。もしそのシーンで全てが日本語化されていたらどうか。考えるまでもなくストーリーが台無しになってしまう。実際私も意思疎通がうまくできないもどかしさを目の当たりにすることによりストーリーにのめり込んでいけたので、ここはあえてそのままで作りきってほしい。

 

テストプレイが開始されて以来、『泡沫冬景(Christmas Tina)』は多くのプレイヤーから高評価を受けている。たくさんのレビューも寄せられているが、その中で私が「なるほど、確かに」と思ったのが視点に関する指摘である。

本作では少年側から語られる部分と少女側から語られる部分があり、視点が行ったり来たりすることが珍しくない。おそらくそのレビューを書いたプレイヤーは視点が少年側で固定されることを想定していたのだろう、それが切り替わることでうまくストーリーに入っていけないことを気にしていたのだ。最初から自然と3人称視点で読んでいた私には違和感はなかったのだが、1人称視点で読んでいたら違和感を覚えたのにも頷ける。この部分も本作の特徴になるのかもしれない。

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本作はスマホアプリだけでなく、steamでの提供も予定されているようだ。正確なリリース日についてはまだアナウンスされていないが、分かり次第こちらでもお伝えするつもりだ。制作陣の公式Twitterも開設されているので気になった人はフォローしておくといいかもしれない。

ひょんなことから偶然出会い、最初は互いの言葉もわからなかった2人の関係にこれからどんな変化が生まれていくのか、非常に楽しみだ。PCでノベルAVGを遊んでいたような人、どことない懐かしさや青春のひとときに触れたい人にはぜひプレイしてみてほしい。およそ30年前の東京で、存在したかもしれない日常の一片にシナリオや音楽を通じて触れることができるだろう。

【お知らせ】当ブログで取り扱うタイトルの幅を広げることに関して

当ブログは私が実際にプレイして面白いと思った、または特筆すべきものがあると感じた東アジアのスマホゲームについてレビューを書いて紹介するものだ。

現在もいくつか記事を書いている最中だ…が、気に入ったものを結構厳選していることもあり早くもネタが尽きかけてきており…

ということで、ちょっと範囲を広げようかと。

これまでは正式にリリースしたものを対象にしていたが、今後はテストプレイに参加できたものや初出情報が出たばかりのものも対象にしてその時点での印象を記したり、「こういう面白そうなゲームが出るぞー!」という情報周知的な意味合いもかねてやっていこうかと。

ということで引き続きよろしくお願いいたします。

『Epic Seven』レビュー ~美しきアニメーションと極限まで削られた驚異のローディング時間に刮目せよ~

9月14~15日、東京ゲームショウ(TGS)2019の一般デーが開催されているその裏で、Yostarは「アズールレーン 2nd Anniversary Fes.」を開催していた。そのイベント内に間借りするような形で、同社が運営を控えている新作Epic Sevenスペシャルステージが催された。
実は『Epic Seven』は私にとってとても思い入れのあるタイトルだ。といってもそれは私の実らなかった片思いなのだが…今回は少しだけ、その昔話をさせてほしい。

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私が『Epic Seven』の存在を知ったのは、今からもう3年近く前の2016年12月にさかのぼる。ある日、4gamerに1つの記事が掲載された。ふとそれを見て、そこで紹介されていたゲームが韓国のゲームであることとアニメーションをウリにしているということは分かった。しかしそれ以外のことはよくわからなかったので記事内にあったティザーPVをまずは見てみることにした。
当時、韓国のゲームと言えば既に『セブンナイツ』がヒットしていたので、「どうせセブンナイツの二番煎じみたいなもんじゃねーの」とあまり期待もせずにPVを見始めた。
 
だが私は目を奪われてしまった。もう完全に一目惚れだった。アニメーションがふんだんに取り入れられていて、美しいスキルカットイン演出もあることが見てとれた。当然実際にプレイしたわけでもないのに「これは絶対面白い!」と即座に思ったのだ。
当時はまだ『プリンセスコネクト!Re:Dive』(以下:『プリコネ』)もなかった時代だ。ビジネス的な面で見ても、間違いなく成功するという確信があった。非常に強い衝撃を受けた私は、その衝動のままに即座に上司にこう進言した。
「これ絶対ヒットしますよ!うちでライセンスインやりたいんで動けませんか!?」と。
 
これ以上はあまりにも込み入った内容になるので差し控えるが、あの日以来『Epic Seven』を追いかけ続けたからこそ、夢が叶わなかったとわかった時は本当に悔しかった。
でも、これからはプレイヤーの1人としてまた応援したいと思っている。だからあの日々に区切りをつけるために、私の心にある情念を断ち切るために、『Epic Seven』について紹介させてほしい。
 
 本作について端的に形容するならば、アニメーションに代表される2D表現にこだわりぬいた王道RPGである。系統としては、あくまで個人的な感想だがFate/Grand Order』(以下:『FGO』)や『プリコネ』が近いと考えている。開発会社のSUPERCREATIVEによる自社開発エンジン「YUNAエンジン」で描かれる滑らかなアニメーションの数々は何度見ても飽きないほど美しい。

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そんな『Epic Seven』には2つの大きな特徴がある。1つはもう既に挙げてしまっているが、誰が見てもはっきりとわかるほど派手な要素であり、もう1つは言われてみれば確かに…と思うような地味な要素である。
 
まずは派手なほうの要素、そう、アニメーションは本作における最大のウリである。
戦闘では、敵も味方もあらゆる部分がアニメーションで表現される。中でも初期ランクが☆4以上のキャラは、保有する3つのスキルのうちの1つに美しいカットイン演出が入る。
私の1番のお気に入りであるスキルアニメーションをさっそくご覧いただこう。

これがもうたまらない。個人的にはずっと見ていたいと思うレベルの出来である。しかもなんとありがたいことに!図鑑機能から未所持のキャラクターも含めてアニメーションの演出をいつでも見ることができるのだ。もうこれをおかずにご飯を何杯でもおかわりできるくらい、私は満足している。
一方、初期ランクが☆3以下のキャラには原則としてスキルのカットイン演出はない(一部例外はある)。これはちょっと残念なのだが…しかし!☆3キャラにはクラスチェンジのようなシステムがあり、これに対応するキャラが現在進行形で増えている。中には「誰だお前!?」となるほど見た目も一変するキャラもいるが、これにより使用できるスキルが変更され、しかも1つはちゃんとカットイン演出がつくのだ。

ただストーリー進行に関しては、部分的にアニメーションが挿入されることはあるものの、全編通じてアニメーションでお届け!というわけではない。そのため『プリコネ』と比べるとストーリー演出はやや見劣りするかもしれないが、そこは『プリコネ』がすごすぎるので仕方ないだろう。

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そして地味なほうの要素だが、まずはこちらをご覧いただきたい。
…お分かりいただけただろうか。
ホーム画面から冒険へ遷移する際や戦闘時など、いずれも「Now Loading」のような間を挟むことなくプレイが継続できる。これが「0秒ローディング」である。
バトルの周回も必要になる本作で、ただ待つだけの退屈な時間を排除しているというのは長くプレイすればするほどありがたみを実感できる。ものすごく目立たない要素だが、確実に快適なゲームプレイをサポートしてくれるのでいい意味でボディーブローのようにジワジワと効いてくるだろう。
 
美しいアニメーションに酔いしれ、周回時のローディング時間も気にならないとなるとバトルへのモチベーションも上がるというものだ。本作のバトルは基本的にコマンドバトルによるWAVE形式で構成されている。最大4体のキャラ+ガーディアン1体(+フレンドのお供キャラ)で部隊を編成し、全WAVEで敵を撃破するとステージクリアとなる、今となってはもはやおなじみの形式だ。
少し特徴的なのは、WAVEの道中でランダムに補給ポイントや宝箱が出現することだ。HPを回復できたり、宝箱からは課金通貨が出ることもあるので見つけたら忘れずに回収しよう。一般的に苦痛な作業になりがちなバトル周回がちょっぴり楽しくなる嬉しいシステムだ。

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バトル画面左側には敵味方含めたキャラが行動できる順番が表示されていて、下に到達したキャラから順にコマンドを実行できる。行動順はキャラの速度に依存するので、速度バフ/デバフなどを駆使した戦術運用も可能だ。ただ個人的にはキャラの表示が重なっていて分かりにくいと感じることもあり、まだ改善の余地があるように思われる。

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行動順を迎えたキャラはスキルを使って攻撃やサポートを実行する。各コマンドを実行すると「ソウル」が獲得でき、定量溜めるとスキル使用時に効果を上昇させたり、強力なガーディアンを召喚するのに使うことができる。
 
それだけではない。戦闘の中にはステージを一直線に進むのではなく、マップを縦横に移動して探索しながら進む形式のものもある。移動や探索というのはRPGのちゃんと冒険している感を生み出す要素の1つだと思っているので、こういったただ同じ形式の戦闘を繰り返すだけではないことも私のお気に入りポイントだ。
ただ、探索を続けているとキャラの士気が次第に下がっていき能力も低下してしまう。そういう時は1度でマップ踏破しようとせず引き上げることも大切だ。

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なお、探索中に1度だけ士気を回復させる手段がある。それがキャンプだ。提示された2つの話題から1つを選び、パーティに編成したキャラと会話するのだが、その話題が他のキャラと親和性の高い内容だと士気が上がり、逆に盛り上がれないと士気が下がってしまう。キャラの意外な一面が垣間見れたりするし、どこか往年のJRPGっぽい雰囲気を感じさせてくれる。

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またオート機能もあるので手軽にプレイすることも可能なのだが、私はこのオート機能に少し不満を持っている。なぜなら先述した道中の補給ポイントや宝箱をスルーしてしまうらだ。オート機能というのはプレイヤーが手を離しても、もっと言うと目を離しても期待した結果をもたらすことに意味があると私は考えているので、いつ出るかもわからない宝箱を見逃さないようチェックしなければならないならオートの存在意義は薄れてしまわないだろうか。この部分も日本版では改良されていることを期待したい。
 
そして美しいアニメーションがあるからこそ、キャラがより一層引き立つ。日本版がリリースされたらプレイヤーには魅力的なキャラをたくさん愛でてほしいと思うのだが、『Epic Seven』のキャラ育成要素は底なし沼のような深みを持っている。突き詰めようと思うなら相応の覚悟が必要になるだろう。
全てのキャラは最高レアリティの☆6まで成長する仕様なのでレアリティ格差はないと言ってもよいだろう。そして同一キャラを重複させた覚醒、素材を使用した覚醒、スキル強化といったところはスマホRPGではおなじみだ。これらも段階を重ねていくとだいぶキツくなるのだが、極端な話覚醒や強化のための素材さえ調達できればいいので終わりが見える分まだマシに感じられる。
ではいったいどの部分が「沼」なのかというと、キャラの「装備」がとんでもない沼だったのだ。

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6か所に装着する各装備には『サマナーズウォー』における「ルーン」のようなものが設定されていて、同種の装備を複数装着するとセット効果として能力が上昇する仕組みだ。まずこのセット効果の種類が多いうえに、それとは別に能力値を向上させるメインオプションとサブオプションもあり、その組み合わせたるやまさに無限大と言えるほどだ。

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この装備の場合、メインオプションがAttackでサブオプションが3つ付いている。そしてAttack Setの装備を4つ装着すれば攻撃力が加算される
その膨大な可能性の中から、厳選に厳選を重ねた究極の一点物を見出すためのいわゆる「掘り」がプレイヤーを待ち受けることになる。これが私の感じた「沼」の正体だ。お目当てのものを探し出すために一心不乱に戦い続けるのは確かに苦しいが、それが突然ポロッと転がり込んで来たらもう脳汁ドバドバなことは間違いない。この装備掘りで私はかつて『モンスターハンター』シリーズでモンスターそっちのけでピッケル片手に炭鉱夫として過ごしていた時期を思い出した。あの感覚が1番近い気がするのだ。
 
ただ1つ、キャラに関して個人的に残念だなと思う点を挙げるとすれば、いわゆる個別のキャラストーリーに当たるものが見当たらないことだろうか。一部はガチャでピックアップされたり新キャラとして登場した時に紹介のような形で簡素なものが用意されていたりもしたが、期待しているものが大きい分、落胆せざるを得なかった。本作においてはキャラに愛着を持ってもらうことは非常に重要になるだろうから、そのための要素の1つとして今後の実装を期待したい。
 
 
そして、気になる人も多いであろうマネタイズについてだが、メインになるのはやはりガチャだろう。キャラとアーティファクトが混ざって排出されるいわゆる「闇鍋形式」が採用されている。アーティファクトというのは装備同様キャラに装着するもので、まぁ…「『FGO』における概念礼装」のことである。f:id:kinomukumama0526:20190429025539j:plain
そのほかにもいろんなアイテムがセットになったパックが毎月数多く販売されているが、1ヶ月で買える分を全て買おうとすると日本円にして総額なんと40万円以上になる。お財布との相談が必要になるかもしれない…。

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また「サンクチュアリ」という機能がある。ここでは一定時間ごとに課金通貨とゲーム内通貨を生成できるほか素材から装備を制作したりスキル強化アイテムや経験値素材などを生産することができる。

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『Epic Seven』はキャラとストーリーの魅力を高品質なアニメーションをもってプレイヤーに提供する正統派のスマホRPGだ。もちろんまだ粗削りだと感じた部分はあるのだが、あの『アズールレーン』を成功に導いたYostarが目利きをして射止めたタイトルなのだから、そりゃあ期待せずにはいられない。

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遂に日本版配信日が11月7日と発表された。私が3年前に受けた衝撃を早く日本のスマホゲーマーにも味わってもらいたいものだ。
 
※この記事内容は韓国版『Epic Seven』を元に作成しているため、今後リリースされる日本版とは内容が異なる可能性があります。予めご了承ください。