喜の向くままスマホゲームブログ

当ブログは東アジアのスマホゲームについて「喜の向くまま」に書いていくものです。中国関連の話題が多めになると思います。

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』レビュー ~待っていたのは、心温まる不思議な冒険だった~

「面白い」という言葉は、ゲームを語る上で最もポピュラーな言葉だと思う。

だが、ときに「面白い」ではない言葉で形容するほうがいいと感じられるゲームも存在する。『Sky 星を紡ぐ子どもたち』(以下『Sky』)はまさしくそんなゲームだ。

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良いゲームはどれも「たくさんの人にプレイしてみてほしい」と思うものだが、『Sky』は特にそれを強く感じさせる作品である。というのは、本作には不思議な温かさがあり、それに触れた時に(いい意味で)鳥肌が立った。そういった体験ができるスマホゲームというのは決して多くない。他に類を見ない、極めて「異質で芸術的」なスマホゲームだからである。

『Sky』はプレイヤーが星を紡ぐ子どもになり、一般的なアクションゲームの要領でフィールドを移動したり身に纏うマントを使って空を飛びながら、落ちてしまった星々を星座の元に届ける旅を通じて世界に秘められた謎を解き明かしていくゲームだが、では本作のどこに私は異質さを感じ取ったのか。

実は『Sky』は形態としてはオンラインゲームのようになっていて、自分以外のプレイヤーも同じフィールド上で旅をしている。だが、彼らと音声やテキストを用いてコミュニケーションを図ることはできない。しかも特定のプレイヤーと示し合わせて一緒に遊ぶことも叶わず、出会いは常に一期一会である。

※2019/07/31追記:テキストを用いたチャットや、フレンドのもとにテレポートして一緒にプレイすることが可能な仕様となっておりました。ただし、これらの機能を開放するためにはゲーム内通貨であるキャンドルが必要であり、機能自体を前面に押し出しているわけではないのでやはり非言語コミュニケーションが推奨されているようです。訂正してお詫びいたします。

複数人が協力しなければ辿りつけない場所も存在する。つまり、言葉が通じないような状況下で誰かもわからない相手と互いに協力して旅をすることが求められている。この独特なゲーム体験が『Sky』の1番の魅力だ。

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この扉は1人では開けられない。協力してくれる人を探す必要がある。

正直に言って、不自由さはある。だが不自由だからこそ、意思疎通ができた時の感動が大きい。コミュニケーションの手立ては言葉だけじゃないという実感が『Sky』への没入感を高めているのだ。

旅の舞台となるフィールドは7つ用意されているようで、各地で落ちた星々を星座の元に届けると次第に行けるフィールドが増えていく。

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荒廃した砂漠のようなフィールドから旅は始まる

落ちてしまった星は、どういうわけか人の姿をしている。星の願い、想いがそうさせているのだろうか。彼らは黒ずんだ姿になってしまっているが、その近くには彼らの思念体のようなものが存在している。その思念体に近づくと、道案内をするかのごとくプレイヤーを本体のところへと導いてくれる。そして本体にキャンドルの火をかざすと、黒ずみは消え去り、プレイヤーにモーションを1つ託して星座の元へと帰っていく。これを繰り返して世界に希望の光を灯す旅を続けることがプレイヤーの最大の目的である。

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思念体が本体の近くに辿り着くまで後を追いかけよう。すると…?

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プレイヤーにモーションを託し、天へと帰っていく。

託されるモーションは感情、意思や状態を表現したものだ。言語による意思疎通ができない本作ではボディランゲージはとても重要。例えば扉を開けるのを手伝ってほしい時、言葉がなくても「こっちへ来て!」というモーションを使って扉の前に立てば、何をしたいかはきっとわかってもらえるだろう。

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またフィールドには子どもの姿をした光の集合体があり、それに触れることで「光の翼」を獲得することができる。これを規定の数集めていくと、プレイヤーが空を飛ぶ際に羽ばたける回数が増え、以前よりもより高く遠くに行けるようになる。

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しかし空を飛ぶのも際限なく飛び続けられるわけではない。画面中央上のゲージが尽きてしまうと飛べなくなってしまうが、そういった時は光源に近づいたり他のプレイヤーとキャンドルを贈り合うことでゲージを回復させることができる。

高い場所に行きたいのに、途中でゲージが尽きて飛べなくなってしまう時もある。1人ではどうしようもなくても、同じような境遇の誰かと言葉を交わさずともキャンドルを贈り合って先に進むことができたらもうそれだけで素敵なゲーム体験だ。

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なお、一度星座の元へ送り届けた星とは再び会うことができる。彼らにキャンドルの火を贈ると、楽器やお面などキャラクターの外見をカスタマイズするアイテムを入手することができる。

完全に余談だが、竪琴を入手したプレイヤーが『千と千尋の神隠し』の主題歌でおなじみの『いつも何度でも』を頑張って演奏してしようとしていた。するとその周りには自然と人が集まってくる。そういったささいなきっかけからも交流が生まれるのは見ていてほほえましかった。

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キャンドルの火の集め方はいたってシンプルだ。フィールドに点在する火のついたロウソクなどの光源に近づくと自動で画面左上のキャンドルのゲージが貯まっていき、一定量集めることで「キャンドルの火」として星に贈れるようになる。

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もう1つ、キャンドルの火の入手方法がある。それは課金による購入だ。『Sky』は基本無料/アイテム課金のマネタイズを採用している。ただもちろんPay to Winなどではなくロウソクの火を集めるための時短としての課金という意味合いが強いので、率直に言うと課金の必要性はほぼ感じられない。(しかし、ゲームとして楽しませてもらったことに対してお金を払いたいという気持ちもありちょっと複雑…)

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 『Sky』は運営型のゲームを志向しているようで、今後もシーズンイベントや新要素の追加などのアップデートを予定しており、割と長く遊べる作品になるかもしれない。世界観にマッチした音楽も素晴らしく、ゲームを引き立てる大きな要素となっている。

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大空と大地を巡る壮大な旅の中で、数多くの見知らぬプレイヤーと一瞬の時を共有しながら世界に希望をもたらしていく。言葉や文字による情報は極力排除されているから、展開されている物語をどう受け取るかすらプレイヤー次第である。そんな旅の過程で、決して普通とは言えない不自由さすら受け入れて『Sky』の楽しさを見出したプレイヤーは自らの心にいつしか暖かい陽だまりができていることに気づくだろう。それは日頃当然のように言葉を通じてやり取りをしている我々が失いかけてしまっているものの正体のような気がしてならない。

もし、この旅を終えたプレイヤーがいるならば、きっとその人はこう思っているに違いない。

「このゲームに出会えて本当によかった」と___。

 

※このレビューは中国版『Sky光·遇』をもとに作成しているため、後日配信される日本版とは異なる部分がある可能性があります。